少し前にゲーム依存が疾患として認められましたね。発達障がいの相談でも、ゲームにのめり込むという話はよく聞きます。
同じように「朝起きられない」という相談も意外に多いです。
私自身はこれまでの経験から、発達障がいにまつわる「朝起きられない」や「ゲームにはまる」という相談は、“取りかかるのは最後!”と思っています。
ですが、保護者の方は急ぎどうにかしたいと切実に思われるので、最初の主訴になることがとても多いです。
「朝起きる」と「ゲーム」を同時に述べているのは、「朝起きられない」ことの理由が、「夜遅くまでゲームをしているから」が多いからなんです。
ただ、人によって「ゲーム」でなく、DVDやインターネット、SNSやチャットのこともありますので、ここでは「朝起きられない」に焦点を当ててお話しようと思います。
朝起きられない原因となる疾患名がありますし、睡眠のメカニズムなど研究は様々あります。
ただ、医学的なことに関して、あまり詳しくないので、ここでは省きます。
また、発達障がいでは睡眠障害をもつ人もいて、脳機能の障害が故に、生来的に生活リズムの整いにくさが起こりやすいです。
ですが後天的に生活リズムが乱れてくる場合もあります。
両者にどのような関連性があるかは明確なデータは持ち合わせていないのでわかりませんが、対応や考え方は共通すると思いますので、今回はあまり区別せずにお話します。
朝起きられない相談には、生活全体から考えます。
まずは、以下のことを確認していきます。
①生活リズムの確認
毎日、何時に寝て、何時に起きているか
平日と休日で違いはないか
曜日により変化はないか
リズムが崩れ始めたのはいつの時期からか(ここ数週間か、何年も続いてるのか)
②睡眠
睡眠は何時間取るとスッキリ起きられるか
自分で起きてくるか、起こされるのか
睡眠の質はどうか~寝つきが悪い、眠りが浅い、夜中に目が覚める、目覚め方
感覚過敏(音、光、寒暖)の影響
服薬の有無
③活動との関連
夜遅くまで何をしているのか~ゲーム、DVD、インターネット、宿題や勉強ほか
学校以外の部活や塾、習い事、放課後デイサービスなどの利用状況
毎日の活動が本人の能力や興味に合っているか(難し過ぎないか、量が多くないか)
④体力
運動経験のあるなし~部活や習い事など
体を動かすことを好むか
身体の不器用さ
これだけ聞き出しただけでも、朝起きられないという現象の背景には、普段の活動に気力や体力、能力や興味関心が追いつかず、疲れやストレスが溜まってしまっている状況が見えてくるかと思います。
ゲームなどでストレスを発散したり、質のよい睡眠が取れていないため、長時間眠って疲れを回復させたりしていることが伺えるのです。
ですので、対応として、毎日の活動の見直しが要ります。
例えば宿題の量を減らす、部活を辞める、通う時間や日数を減らす、支援級を活用する、学校や事業所を変えるなどで、本人のできる・わかる内容や量を検討するのです。
睡眠環境を整えることも要るかもしれません。
音過敏の方で、睡眠中アイマスクと耳栓をするとよく眠れるようになる方もいました。
眠るために、一時的にお薬を使うことも有効なときもあります。
しかし、それだけではありません。
障がい特性への配慮や、特性から学びにくいスキルを育てることも考えた方がよいかもしれません。
続けて、以下のことを念頭に起きつつ、必要なサポートを考えていきます。
⑤障がい特性への支援、周りの理解と配慮
新しいことや急な変更への耐性~不安や緊張
予定や手順など見通しを持てる支援の有無~混乱やパニック
同時処理能力の程度~同時にあれこれを求められると疲れやすい
完璧主義特性~ちゃんと全てをこなさないと自分はダメだと思い込みやすい
⑥疲れやストレス発散の手段
余暇や趣味、日々の楽しみはあるか
リラクゼーションの手段はあるか
一人でクールダウンできる空間と時間はあるか
自らの感情に気づいて処理(ケア)できるか
愚痴や悩みを話せる場所や相手がいるか
⑦表出コミュニケーションの手段を持っているか
自分から他者にどれだけ働きかけられるか
自分の気持ちや考えを他者に話せるか
口頭または視覚的な伝達手段はどれだけ有しているか
報告、連絡、相談、頼む、断る、交渉のスキルはあるか
自分で現実的な選択、決定する力やその経験はあるか
障がい特性への配慮がなされないと、新しいことへの不安や緊張が高まるだけでなく、うまくいかなかったときの失敗感や自己嫌悪で、どうせやってもダメだという思い込みを作りやすいです。
それが高じると、うつなどを発症したり、新しいことへの挑戦を回避して引きこもるようになります。
また、他者への相談スキルが育っていなかったら、そういうしんどさを周りに訴えることもできず、解決方法も見いだせず、自分だけで抱えてしまうんですね。
表現できなさが、朝起きられないという行動として現れているのかもしれません。
…というように、簡単そうに見える「朝起きること」なのですが、その裏にある理由はとても奥深いのです。
「ゲーム」の相談も同じです。ゲームって、やっててとても達成感があるのですよね。
他のことができないくらいゲームにはまり込むということは、現実生活では達成感を得られずストレスを溜めていることがほとんどだと思います。
結局は、障がい理解と合わせた支援という基本に戻るんですよね。
そして「朝起きる」や「ゲーム」は、最後に取りかかる、というよりは、色々取り組んでいくことで、いつのまにか解決していくものではないかなあ…と、思うのです。
(終)
※ここに書いたことは、これまでの実践経験から得た知恵みたいなもので、研究による検証などは行っておりませんし、今後変わりうることもありますので、そのつもりでお読みください。
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